あの日、太陽の塔が、君を変えてしまった
あれはある日の夕方頃だったでしょうか。
ジャスが流れるすてきなカフェで君とおしゃべりをしていたのは。
何気ない会話だったのです。
最近、わたしが文書を書いてるものですから、ふと君に尋ねたのです。
君は仕事の合間を見つけてよく読んでくれていました。
「最近、みんなに気軽に楽しんでもらいたいって思って書くのも楽しいし、何か真剣に静かに書くのもどっちも楽しいんだよね。君は読んでてどっちが好き?」
すると、それまで和やかにおしゃべりを楽しんでいたのに、君はカッと目を見開いてこう言ってきたのです。
「お前、太陽の塔のこと、忘れてないよな? ああいうお前の側面しかなかったら、お前、やばいやつだから。 だから、どっちも書けや」
太陽の塔……。
ああ、あの日のことです。
やっぱり君は、覚えていた……。
許してもらえると思ってた。
嗚呼、優しい日差しの中の午睡のように、それは淡い夢だったのか。
あれは暑い夏の日でした。
まだ学生だったわたしが夜行バスを降りるなり、蝉の声がわんわんと降り注ぎ、押しつぶされてしまいそうでした。
そうです。
4年前のあの日、私たちは大阪に転勤になった君を訪ねて、仲の良い友達と3人で大阪に行った時のことでした。
私たち3人は、大学院に行くなどして、まだ学生でした。
君だけが、社会人でしたし、また、縁もゆかりもない土地で一人頑張る君を応援したいと思い、ちょうど君の誕生日だったことも合間って、3人で東京から会いに行ったのです。
私たちはまず、お腹も空いていましたので、道頓堀のあたりに行こうと言いました。
そこで、グリコのポーズをしてみたり、くいだおれ人形と仲良くなったりしながら、美味しいお好み焼きを食べ、愉快な時を過ごしていました。
あの時食べたお好み焼きは、東京で食べるそれよりもずっと美味しいものでした。
これは、友人の一人、はるちゃんです。
右は、くいだおれ人形さん。
お腹も満たされたことだし、と私たちは次の行き先を考えました。
「そうだ! 太陽の塔みたい! そういえば、今はひまわり畑もすごいらしいよ!」
誰が言ったのでしょうか。
誰が言い出したのか、記憶は定かではありませんが、大阪万博記念公園に行くことにしたのです。
あの日は溶けるように暑かった。
若干溶けていました。
いや、ほとんど融けていました。
しかし、初めて見る太陽の塔は不思議な吸引力がありました。
「ウェーイ!」
太陽の塔ごっこをしたりもしました。
この時の感動が、私たちを狂わせて行くとは、ついに気がつくことはなかったのです。
その日は大阪市内で美味しい串揚げを食べ、私たちはホテルに戻り、翌朝神戸に向かいました。
わたしは夜が賑やかな街がすきです。
人の暮らしの気配がするから。
さて、神戸に着きました。
神戸には北野異人館街というすてきな場所があります。
わたしは家族とも訪れたことがありましたが、雰囲気がすきで二度目となる今回も瑞々しい気持ちで楽しんでいました。
異人館街の雰囲気はこんな感じです。
さて、異人館の冷気にも癒されながら、真夏の神戸を散歩するのはとても楽しいものでした。
レンガ模様の道も建物も、遠い異国の気配とともに、甘い神戸のノスタルジアに満ちていました。
この写真は、うろこの家だったでしょうか、とある館の中で撮った写真です。
左がみーちゃん、右がのんちゃんです。
のんちゃんの目がキラキラですね。
神戸の郷愁に心が躍ったのでしょうか。
いいえ、違います。
のんちゃんがこういう目をしているときは、だいたい悪いことを考えています。
わたしが以前こんな目をして言われたことは「ビールかけしよう〜」でした。
「おさんぽしよう〜」とか「お茶しよう〜」と同じ穏やかさでで言われるので、ついつい快諾しがちです。そして、それは彼女の美徳でもあります。
蛇足になりますが、みーちゃんはのんちゃんやわたしがこういう目をしてるとき、水鉄砲で水をかけられたりすることが多かったからでしょうか。少し嫌な顔をします。愛は「愛してる」と言うことだけではないのです。
我々は普通の旅行のように観光をしていましたが、何と言ってもその日はみーちゃんの誕生日でした。
学生だから、あんまりお金はない、でも、何か素敵なプレゼントをあげたいね、私たちはそう思い立ち、六甲ケーブルに乗って、22才最後の夜に夜景を見に行くことにしました。
神戸の夜景には品があるような気がします。
様々な人々の人生が織り成されて作られた奥行きのある暮らしの様式、そう言うものを堂々と体現しているような美しさです。
私たちは、夜景の余韻をそれぞれの胸に残しつつ下山しました。
いよいよお祝いです。
サプライズで予約したお店に行きました。
夜景の余韻も手伝って我々三人は上機嫌で祝い、彼女もまた、上機嫌でワインを飲みました。
しかし、社会人と学生です。
彼女は疲れていたに違いありません。
ホテルに帰ってからも、ガンガン飲みまくる私たちの脅威にさらされ、みーちゃんは「あ〜もう、わたし無理〜」とベッドに倒れ込んでしまったのです。
嗚呼、わたし達はなんて愚かだったのでしょうか。
なぜか既にお気持ちが悪くなられているみーちゃんのベッドに飛び乗り、謎の踊りを始めたのです。
以下、わたしが個人的に今はまっているhitomiさんのLOVE2000を流しながらお届けします。ぜひおかけになりながら、以下お読みください。
2006 hitomi (LIVE) LOVE 2000 - YouTube
↓その時の様。
©️のんちゃん画伯
〜愛は どこからやってくるのでしょう 自分の胸に問いかけた〜 (LOVE2000)
右上がみーちゃんです。
みーちゃんは両手を目の当たりにかざし、気持ち悪そうです。
みんなで心配そうにみーちゃんをじっと見つめます。
みーちゃん……。
みーちゃんの腕の形、なんだか…太陽の塔みたい…。
そう思い、わたしはそっとみーちゃんの手にワインボトルを握らせました。
これがのちの太陽の塔事件です。
©️のんちゃん画伯
〜夢は いつでも膨らむばかりで 誰かの想い、無視してた〜 (LOVE2000)
何を思ったのでしょう。ワインボトルをそっと握らせた後、わたしは、柿ピーを食べればみーちゃんは元気になるのではないか、そう考えました。
なので、その後、なぜか一粒ずつ柿ピーを食わせるという奇行に打って出たのです。
愛情ゆえの混乱としか思えません。
ああ、長くなってしまいました。
これが、みーちゃんの激おこ案件、「太陽の塔事件」です。
なるほど、なるほど、わたしは何やら一生懸命水素がどうの、とか、学生運動がどうのなどと書いていますが、太陽の塔事件の犯人もあるわけです。
確かに、わたしがありとあらゆる人にひたすら柿ピーを食わせ続ける奇怪なやつであったのならば、友達などできなかったかもしれません。
だから、君は両方書け、と言ったのですね。
ちなみにこのみーちゃん、以前書いたこの記事のミサキと一緒の人です。
こんな話をした後に、「どっちがいい?」なんて聞いたので、きっとドキドキしちゃったのでしょうね?
人間は多面的な生き物です。
その多面性が、思わぬ化学反応を起こすこともあります。
ある一面で理解できなかった人を、また別の側面を知ることで、大好きになることもあります。
新たに知った側面によって、他の側面の意味を知ることもあります。
だから、わたしは自分の意見を持ちつつも、なるべく否定だけに終始する人間にはならないようにいたいと思います。
(最後にとっても嬉しかったから報告させてください)
「平成生まれの大人になり方」の記事ですが、わたしが密かにハイセンスな写真の数々でひっそりInstagramのファンになっている早稲田大学の渡辺仁史先生にいいね!と言ってもらって、出社前に喜びで部屋をひとしきり駆け回りました。
先生とは一度お会いしたことがあります。
わたしはこのような伝統ある装束で伝統ある早稲田大学の卒業式に臨んでいました。そして、何の関係もない、先生の研究室の懇親会に乱入しました。そして、たすきには「スケベ代表」と書いてありました。
そんなやつと記念撮影してくださった先生のお心の広さは、すでに解脱していると言ってもいいでしょう。
ああそうでした、この記事、みーちゃんもシェアしてくれたのです。
とても嬉しかった。
今週、神戸旅行のメンバーで旅行に行きます。直接、お礼できるのが楽しみで仕方ありません。
友情は素敵です。
いつまでも、友達を大切にしていきたい。
そう思っています。
〜愛はどこからやってくるのでしょう 自分の胸に問いかけた
ニセモノなんか 興味はないワ 本物だけ 見つけたい〜 (LOVE2000)